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新社会人 キャッチコピー
ハガネのように 花のように
君が今立っている職場が、君の出発点だ。さまざまなことが起きている春だ。働くとは何か。生きるとは何か。日本人皆が考え直す機会かもしれない。世界中が、これからの日本に注目している。彼等が見つめているのは日本人ひとりひとりの行動だ。日本人の真価だ。国家は民なのだ。ひとりひとりの力が日本なのだ。力を合わせて進む。しかし力を合わせるだけではダメだ。一人の力を最大限に出し、強いものにしなくてはいけない。
新しい人よ。今は力不足でもいい。しかし今日から自分を鍛えることをせよ。それが新しい社会人の使命だ。それが新しい力となり、二十一世紀の奇跡を作るだろう。ハガネのような強い精神と、咲く花のようにやさしいこころを持て。苦しい時に流した汗は必ず生涯のタカラとなる。ひとつひとつのハガネと、一本一本の花は、美しくて強い日本を作るだろう。美しくて強い日本人、職場を作ろう。その時こそ笑って乾杯しよう。
新社会人おめでとう。 新聞広告 伊集院静 2011年 SUNTORY 山崎 サントリー シングルモルトウイスキー
答えは、ひとつじゃない。
強いときの自分より 弱いときの自分のほうが ほんとの自分なのかもしれない 嘘をつく自分より 正直な自分のほうが 人を傷つけたりする 疑ってる自分より 信じきってる自分のほうが なまけてるみたいだ だれかをおもう自分より 自分をおもう自分のほうが だれかを幸せにできる気がした きょうの自分は、今だけの自分。あしたの自分は、また、きっとちがう。自分をこわす。自分をつくる。だれかと出会って、また、自分が生まれる。 いろんな卒業がある。いろんな自分がいる。いろんな思いがある。リクルートは、そんなあなたを、ずっとずっと応援します。卒業、おめでとう。
FOLLOW YOUR HEART RECRUIT リクルート 2006年 新聞広告 学校 学生 新卒 新社会人 春 佐倉康彦 小宮由美子
先駆者になれ。
新社会人おめでとう。今日、君はどんな職場で目の前を見ているだろうか。どんな仕事であれ、そこが君のスタートラインだ。新しい道が君の前にある。しかしその道はまだ見えない。新しい道とは何だろうか。それはまだ誰も分け入ってない場所に君の足で踏み込んで初めてできるものだ。そこはまだ闇のような世界かも知れない。光も音も感じないかもしれない。しかし勇気と信念があれば、必ず光はさしはじめる。明るい音も聞こえてくる。新しい道を踏み出せ。先駆者になれ。そうして誰もまだ見たことのない、まぶしい世界を見せてやろう。そのためには力が、汗が必要だ。やわらかな発想と強靱な精神を持って、ともに汗を流そう。新しい道をつくろう。後から続いて来る人たちの歌声を聞く日まで私たちは、一人一人が先駆者になろう。仕事は辛いぞ。苦しいぞ。でも自分だけのために生きているのではないことがわかれば、必ず道はひらく。少し疲れたら夕空を仰ぎ美味い一杯をやろう。新しい道を踏み出す君に乾杯。
君に乾杯。 伊集院静
新社会人新聞広告2014年 SUNTORY 山崎 サントリー シングルモルトウイスキー
諸君。学校を出たら、勉強しよう。
文学部を出ても、工学部を出ても、法学部を出ても、農学部を出ても、経済の勉強。
日本経済新聞社 日経 新人 新社会人 1983年 竹内基臣
踏み込め、踏み込め!失敗を恐れるな!
芸能人は昼でも夜でも「お早うございます」と言う。これ頗る評判が悪いのだが、僕は声を掛け合うのは良いことだと思っている。山登りをする人はすれ違うときに「こんにちわ」と声を掛ける。村の小学生も「コンニチワ」と言う。会社でも同じことなんだ。人に会ったら「お早う」「お早うございます」と言おう。野球の名監督だった三原脩は、守備位置についた選手に「声を出せ」と言った。黙っていると孤独になり塁間が遠く感ぜられると説明してくれた。簡単なようで、これ、案外に難しい。照れ臭いお客さん相手の商売の人は「いらっしゃいませ」と声を掛けるときに、最初は抵抗があるという。一歩踏み込めと僕は言う。挨拶に限ったことではない。難局に遭遇したら、あきらめたり退いたりしないで踏み込んでゆく。不平不満を言いながら、すぐに若年寄になってしまう社員がいる。こういう人たちは最後までブツブツ言いながら不愉快な社員生活を送ることになる。踏み込みが足りなかった人たちだ。特に最初に一歩が肝心だ。諸君は新人だ。一年生だ。フレッシュマンはフレッシュマンらしく、と僕なんかは思う。元気溌剌は見ていて気持がいい。踏み込め、踏み込め!失敗を恐れるな!一日を気持よく過ごせば、夕方のハイボールや水割が気持よく飲める。そんな好青年の新入社員(きみ)に乾盃!新社会人おめでとう。
新入社員諸君。一歩踏み込め! 山口瞳 サントリーウイスキーオールド 春 就職 お酒 新聞広告1994年
可能性にむかって、汗をかけ。
新社会人おめでとう。今日、君はどんな街で、どんな職場で、どんな仕事に就いただろうか。どんな仕事で、どんな職場であろうが、そこが君の新しい出発点だ。そこには必ずかがやく君の明日がある。今の君には見えないかもしれないが、仕事とは何かをかなえるためにあるんだ。何かとは、まぶしい明日だ。未来だ。信じて欲しい。仕事とは素晴らしい可能性を持つものなのだ。そのためにはベストをつくせ。可能性にむかって、汗をかけ。私たちが信じた可能性を君たちも信じてくれ。信じるもののために、汗を惜しむな。今、君が出す汗が、どれほど貴重で、どんなにまぶしいか やがてわかる時がくる。フレッシュマンよ、今日からは自分だけのために生きてはいけない。仕事とは誰かを、社会をゆたかにするものだ。その汗は、苦しい、辛いことをともなうぞ。くじけそうになった日は、夕刻、美味い一杯をやれ。そうすれば、明日もやれそうだと力が湧いてくるものだ。
まぶしい君に乾杯。 伊集院静
新社会人新聞広告2013年 SUNTORY 山崎 サントリー シングルモルトウイスキー
人がまずあるのだ。
新社会人おめでとう。今春、君はどんな仕事に就いただろうか。どんな職場であれ、君の新たな人生がそこからはじまる。仕事をする場所とは、何だろう?会社であれ、工場であれ、仕事ができる場所は素晴らしい空間なんだ。どうして素晴らしいか?そこで何かが生まれ、何かが作られるからだ。仕事とは、何かを生み、作り上げ、それが人々をゆたかにするものだ。だから仕事には慈愛があり、尊厳があるのだ。それ以外を仕事とは言わない。社会が先にあったのではなく、人がまず何かを作りはじめたのだ。権力や、金を得るために仕事があるのではない。人がまずあるのだ。仕事は君の生き方だ。会社は君の生きる家なんだ。品性のある仕事は、君に品格のある生き方を教えてくれるだろう。こう話してもすぐにはわからないだろう。コツを教えよう。恋愛指南のようだが、君が恋人を好きなように仕事を好きになりなさい。君が最愛の人を愛するように職場を愛することだ。そうすれば君は将来、人生で何よりも価値のある、誇りと品格を手にできる。とてもできそうにないって?それが大人の日々というものさ。そんなときは一杯のシングルモルトウイスキーに聞いてみればいい。「私は大丈夫でしょうか」「大丈夫ですって、乾杯」
新社会人新聞広告 伊集院静 2006年 SUNTORY 山崎 サントリー シングルモルトウイスキー
仕事の喜びとは何か?
新社会人おめでとう。君は今春、どんな職場でどんな仕事に就いただろうか。そこが君の出発点だ。君を迎えた人たちは皆、こころから祝福している。どうして皆がおめでとうというのだろうか。世の中にはさまざまな事情で働けない人たちが大勢いる。その人たちの夢を私は聞いたことがある。「どんな仕事でもいいから働きたい。働いて一人前の人として生きたい。」皆知っているんだ。仕事をする。働くことがどんなに素晴しいかということを。仕事とはきびしいものか? それはきびしいに決まっている。仕事はつらいか? 勿論、つらい時もある。耐えなくてはいけない時があるか? ある、ある。でもそんなものは仕事の一部分でしかない。仕事には私たちを辛苦に耐えさせる何かがある。働くことで人は今の社会を作ってきた。そうでなければとうに人類は地球から消えている。すべての人に生に尊厳があるように、どんな仕事にも尊厳がある。生きる喜びがあるように、仕事にも喜びがあることを君はいつか知るだろう。仕事の喜びとは何か?結果を称えられることか。金を得ることか?そんなちっぽけなもんじゃない。それは仕事をしていて、自分以外の誰かの役に立っていることがわかることだ。それこそが仕事の真の価値なのだ。初仕事をはじめる前に守って欲しいことがある。それは今まで君が生きてきて大切にしていたものを捨てないことだ。ファッションでも、音楽でも、恋愛だっていいんだ。大切にしているものにはそこに個性がある。個性は君そのものであり、創造の原動力だ。皆が同じカラーで仕事をする時代は終わったんだ。いつか個性が役立つ時がくる。いつか喜びを知る時がくる。目指す頂きは高いぞ。その時のために身体をこころを鍛えておこう。君の出発の日に乾杯。
君の出発に乾杯。新社会人新聞広告 伊集院静 2008年 SUNTORY サントリーウイスキー
誇り高き森を作ろう。
新社会人おめでとう。今春、君はどんな仕事に就いただろうか。どんな仕事であれ、そこから君の新たな人生の第1歩がはじまる。今の君は、一本の若い樹だ。幹も細く、遠くを見渡せる丈もない。強風に、激しい雨に倒れてしまう不安もあるだろう。でも君は倒れない。どんな風にも雨にも立ち向かうだろう。 なぜなら君の中にはあふれる生命力と希望を抱いた根があり、君を支えているからだ。最初は、皆同じ若い樹だったんだ。根っ子からいろんなものを吸収し、カンカン照りに、凍える寒さに耐え、青空にむかって伸びてきた。会社は、職場は、そんな樹たちが集まった森なんだ。皆で素晴らしい森を作ろうじゃないか。森は新しい力を、君という樹を待っている。同じかたちの樹はいらない。個性ある君だけの樹が欲しいんだ。いろんな樹が集まった森はずっと生き続ける。森が恵みを与えるように、会社は人々をゆたかにするものだ。そんな会社がこれからの時代を作る。 生命力が、エネルギーが仕事を発見する。 希望が仕事に誇りを与える。 いつか君が成長し、逞しい幹と、しなやかな枝と、まぶしい葉をたわませた見事なかたちの樹になってくれると期待している。そうなれば私たちの森は、会社は、今よりもっと美しいものになるはずだ。大切なのは土の中に、胸の中にある根だ、精神だ。誇りと品格だ。自分を、人を、社会をゆたかにしたいと願う精神だ。少し疲れたなら、星灯りの下、木蔭にたたずんで休めばいい。星を映したグラスにシングルモルトウイスキーを注ごう。美しい森になる日を夢見ながら、乾杯。
美しい森の夢に、乾杯。新社会人新聞広告 伊集院静 2007年 SUNTORY サントリーウイスキー
その仕事はともに生きるためにあるか。
新社会人おめでとう。君は今春、どんな仕事に就いただろうか。どんな仕事、職場であれ、そこが君の出発点だ。今、世界は経験のしたことのない不況にある。金を儲けるだけが、自分だけが富を得ようとする仕事が愚かなことだと知っていたはずなのに、暴走した。なぜ止められなかったのか。それは仕事の真価を見失っていたからだ。人を騙す。弱い立場の人を見捨てる。自分だけよければいい。それらは人間の生き方ではないと同時に仕事をなす上でもあってはならないことだ。仕事は人間が生きる証だ、と私は考える。働くことは生きることであり、働く中には喜び、哀しみ、生きている実感が確かにある。だから出発の今、真の仕事、生き方とは何かを問おう。その仕事は卑しくないか。その仕事は利己のみにならないか。その仕事はより多くの人をゆたかにできるか.その仕事はともにいきるためにあるか。今何より大切なのはともに生きるスピリットではないだろうか。一人でできることには限界がある。誰かとともになら困難なものに立ち向かい克服できるはずだ。会社とは、職場とはともに働き、生きる家である。仕事は長く厳しくが、いつか誇りと品格を得るときが必ずくる。笑ってうなずく時のために、新社会人の今夜はともに祝おう。その日のために、皆で、ハイボールで乾杯。
その日のために、皆で乾杯。新社会人新聞広告 伊集院静 2009年 SUNTORY サントリー角瓶 ウイスキー
千載一遇。汗をかこう。誇りと品格を持て。
新社会人おめでとう。この言葉を私は十年、フレッシュマンたちに贈ってきた。だが今年は少し趣きをかえる。何十年に一度の不況の時に君は出発する。これを不運と思うか? 違う。チャンスだ。今この時こそが”千載一遇”の時だ。(辞書を引きなさい)今、日本も、世界もさまざまなものが変わろうとしている。政治のあり方も、経済のとらえ方も、企業の理念さえ揺らいでいる。あらゆるものが見直されている。自分たちだけが富や幸福を得ればいいという考えでは世界は閉塞するのがわかった。エリートや、特権を持つ人々のやり方は通用しなくなった。では何もかもが変わるのか? 違う。世の中がそう易々と変わるものか。
道に迷ったら元の場所に帰るのだ。初心にかえろう。基本にたちかえろう。皆がしてきたことをやるのだ。”汗をかこう”懸命に働くのだ。これを君たち若者がダサイと思うなら、君たちは間違っている。真の仕事というものは懸命に働くことで、自分以外の誰かがゆたかになることだ。汗した手は幸福を運んでいるのだ。だから仕事は尊いものなのだ。仕事は君が生きている証しだ。ならば働く上で、生きる上で大切なものは何か。姿勢である。どんな?それは揺るぎない”誇りと品格を持つ”ことだ。これを実行しようとすれば、それは夕刻には疲れもでるだろう。そんな夕暮れは、喉に爽風とおるがごときハイボールの一杯で元気をとりもどそう。
君に乾杯。 新社会人新聞広告 伊集院静 2010年 SUNTORY 山崎 サントリー シングルモルトウイスキー
誇り高きゼロであれ。
新社会人おめでとう。この春 君はどんな職場に立っているのだろうか。どんな職場であれ、そこが君の出発点だ。君の本当の人生がそこからはじまるんだ。学業優秀ではなかった?エリートなんて高が知れている。先輩達はそんなもの期待なんかしちゃいない。出発の君は、0(ゼロ)だ。0はイイ。これから何だってできるし、何にだってなれる可能性のある0だ。無限大にむかう0だ。皆、0からはじめたんだ。すぐに1に、2になる必要はない。本物の仕事は、そんな簡単なものじゃない。すぐに役立つものはすぐに役に立たなくなる。真の仕事には、強く、ゆるぎない心棒がある。その心棒は君が生まれてこのかた触れたことがない、熱い温度を持っている。そのぬくもりを、熱さを、こしらえているのは人間だ。世界を、国を、社会を前に進めてきたのは、その情熱だ。情熱の源は何だろう?私は、誇りだと思う。人間の誇りが苦しい時も辛い時も、心棒を握りしめ車輪を押し続けたのだ。君は仕事に誇りを持てるか?それをしっかり見つめることだ。まずそこからはじめよう。誇り高き0でいて欲しい。0は時折、せつないが。そんな時は一杯のグラスにウイスキーを注いで飲み干そう。
0君に乾杯。 伊集院静 SUNTORY サントリーウイスキー 新社会人新聞広告2004年
熱い人であれ。
新社会人おめでとう。今春、君はどんな職場にたったのだろうか。そこがどんな職場であれ、君は、元気に、堂々と、そこに立って欲しい。だって、元気以外に、君が今できることは他にないんだ。学業が良くなかったって?そんなことはたいしたことじゃない。エリートだけが動かす社会が、いかに非人間的で、愚かなものか皆わかりはじめたんだ。社会は生存競争の場所じゃないんだ。学校とも、試験とも違う。百の仕事には、百の答えがあるんだ。何かがすぐできるほど社会の仕事は簡単じゃないんだ。これから先、十年、二十年・・・・かかって、仕事の真の価値は何か?を発見して行くんだ。私は、どんな仕事にも、大小かかわらず、心棒があると思っている。その心棒で動く歯車が誰かをゆたかにするために回っているんだ。自分だけのためでなく、汗を、気力をしぼるから、本物の仕事は、美しいんだ。心棒を動かすには、エネルギーがいる。エネルギーの根源は、働く人、一人一人の胸にある情熱だ。どんなものに対しても、いつも熱い人が仕事の肝心を掴めるんだ。君、熱い人であれ。叱られても、怒鳴られても、吐息を零されても、そんなもの跳ね返し、心棒を回す人になって欲しい。元気すぎるようなら、夕暮れ、酒場のカウンターで、熱いこころに少し氷を入れて、グラスを挙げればいい。
伊集院静 SUNTORY サントリーウイスキー 新社会人新聞広告2002年
抵抗せよ。すぐに役に立つ人になるな。
新社会人おめでとう。君は今日どんな仕事に就いただろうか。職場はどんな街にあるのだろうか。そこから君のすべてがはじまるから、目の玉を大きく開いて、君の居る場所と仕事を見ることを、私はすすめる。何が見える?ここはちょっとおかしい、とか、これは間違っているんじゃないかというものが見えるだろう。その時、これが社会か、これが仕事というものかと結論を出さないことだ。君の見間違いなら先輩が教えてくれる。そうでなければ抵抗することだ。主張することだ。この時世、社長も、上司も、親方も、若い君たちの意見と、発想を待っている。どんな工房だって、商店だって、工場だって、会社だって、歴史から見れば、昨日、誕生したようなものだ。それも君のように若い人たちが作ったのだ。抵抗しろ。改革しろ。妥協するな。役立たずと蔭口を言われても気にするな。すぐに役立つ人間はすぐに役立たなくなる。仕事の真価はすぐの周辺にはないのだ。君には新しい力がある。抵抗は辛いぞ。孤立するぞ。そんな時は仕事が終わった夕暮れ、街を見回してみればいい。君のような社会人を待っている店灯りはいくつもある。価値ある仕事は街の人のためでもあるのだから。一杯のグラスは君の抵抗にうなずいてくれる。最後にもう一言、すぐに酔う酒は覚えるな。
抵抗せよ。すぐに役に立つ人になるな。すぐに酔う酒は覚えるな。 伊集院静 SUNTORY サントリーウイスキー 新社会人新聞広告2001年
空っぽのグラス諸君。
新社会人おめでとう。今日、君はどんな服装をして、どんな職場へ行ったのだろうか。たとえどんな仕事にといても、君が汗を掻いてくれることを希望する。冷や汗だってかまわない。君は今、空っぽのグラスと同じなんだ。空の器と言ってもいい。どの器も今は大きさが一緒なのだ。学業優秀などというのは高が知れている。誰だってすぐに覚えられるほど社会の、世の中の、仕事というものは簡単じゃない。要領など覚えなくていい。小器用にこなそうとしなくていい。それよりももっと肝心なことがある。それは仕事の心棒に触れることだ。たとえどんな仕事であれ、その仕事が存在する理由がある。資本主義というが、金を儲けることがすべてのものは、仕事なんかじゃない。仕事の心棒は、自分以外の誰かのためにあると、私は思う。その心棒に触れ、熱を感じることが大切だ。仕事の汗は、その情熱が出させる。心棒に、肝心に触れるには、いつもベストをつくして、自分が空っぽになってむかうことだ。それでも諸君、愚痴も出るし、斜めにもなりたくなる。でもそれは口にするな。そんな夕暮れは空っぽのグラスに、語らいの酒を注げばいい。そこで嫌なことを皆吐き出し、また明日、空っぽにして出かければいい。案外と酒は話を聞いてくれるものだ。
空っぽのグラス諸君。一杯の語らい。 伊集院静 SUNTORY サントリーウイスキー 新社会人新聞広告2000年